豊洲の浄化は、こうすれば良かった!


 

当社、川浪(土壌汚染調査技術管理者)のコメント
 
 豊洲市場のベンゼンによる汚染を完全に掘削除去しようとした場合、どの範囲まで対策を講じれば良かったのか、ベンゼンによる汚染が最も広範囲であった5街区の一部分を切り取ってEVSを用いて解析した(3Dモデルは下のSketchfabをご参照ください)。
 図は、AP+2.0m以深のベンゼンの溶出量基準を超過した推定汚染プリューム(黄色)を60°の掘削勾配(労働安全基準の掘削勾配に準拠)で掘削した場合の解析結果を示している(深度方向は3倍にして表現)。図中の緑色部分が実際に掘削除去した区画、赤丸印が第9回モニタリング結果で地下水が基準を超過した箇所、青丸が基準に適合した箇所を示している。
 図中の汚染プリュームを60°の掘削勾配で掘削した場合の範囲と、緑色で示した実際の掘削除去区画を比較すると、掘削区画は汚染プリュームを網羅できておらず、汚染プリュームを完全に除去しようとした場合、現行の掘削範囲の1.5~2.0倍程度は対策する必要があったように思える。EVSを使えば、掘削土量や汚染プリュームの体積も容易に求めることができるが、本解析は5街区の一部分を切り取って解析しているため、体積を記載することは自粛する。なお、緑色で示した掘削範囲はベンゼン以外のヒ素やシアン等の他の有害物質による汚染の対策区画も含んでいるため、ベンゼンの汚染プリュームと必ずしも一致しない範囲がある。また、今回EVSで解析したベンゼンの汚染プリュームは最悪のケースを想定して推定した範囲を示している。

  平成29年1月23日
 

Sketchfabのサイトより3次元モデルが閲覧できます(マウスでモデルがくるくる回せます)。

 
「豊洲地下水、衝撃の基準値超え!」を、EVS解析結果で検証したところ、当たり前のことしか起きていなかった!


 
当社、川浪(土壌汚染調査技術管理者)のコメント
 
EVSにより推定したベンゼンの汚染プリューム(青色:溶出量基準不適合)と高濃度汚染プリューム(緑色:第二溶出量基準不適合)に、AP+2.0m以深の土壌を掘削除去した区画(淡赤色)を重ね合わせると、浄化区画の周辺にベンゼンの汚染プリュームが残存している可能性があることが分かる(弊社既往報告のとおり)。さらに、朝日新聞の報道による第9回地下水モニタリングの結果を重ねると、汚染プリュームが残存する可能性がある範囲の近傍の観測井戸で汚染(赤丸印:ベンゼン基準不適合)が確認されている。
特に5街区ではその傾向が顕著である。これは、地下水管理システムによる地下水揚水が本格稼働し、浄化区画の近傍に残存していた有害物質が地下水の流れによって移流・拡散し、モニタリング井戸で検出された結果であると考えられる。
報道では分析値の信ぴょう性に焦点が当てられているが、EVSで推定した汚染プリュームの広がりをみれば、今回のモニタリングによる分析結果も驚くことではなく、残存している汚染物質が検出されたにすぎない。今後のモニタリングでは、濃度の上昇や、さらに多くのモニタリング井戸においても基準を超過する可能性がある。
 
平成29年1月17日
 

下記Sketchfabのサイトより3次元モデルが閲覧できます(マウスでモデルがくるくる回せます)。

 
3次元モデルの有効性(論文公開)


論文を公開しました。下記リンクよりPDFをダウンロードできます。
EVSを用いた土壌汚染3次元モデルの有効性 ~ゼロリスクを目指した豊洲新市場を例にして~

有限会社太田ジオリサーチ 川浪 聖志、林 義隆、太田 英将
1.はじめに
2.豊洲新市場における調査・対策の概要
3.事例分析のシナリオ
 (1)3次元モデルの作成に用いたデータ
 (2)浄化前の汚染プリュームの分布と対策区画の比較
 (3)地質と汚染プリュームの関係
 (4)低濃度ベンセンプリュームの分布
4.マネジメントの効果(リスクの計量化)

 (1)調査方法による汚染プリュームの違い 
 (2)リスクコミュケーションにおける3次元モデルの有効性
5.おわりに

  平成28年11月7日
 

 
豊洲土壌・地下水汚染の3次元可視化


 東京都が公開したデータ※1を元にEVS※2で汚染状態(浄化前)を3次元で可視化しました。
 以下のSketchfabより、3次元モデルがマウスでグリグリ回して閲覧することが可能です。
 地表面には、浄化されたメッシュ画像を重ね合わせています。赤色のメッシュは汚染対策が行われた部分です。
 青いプリュームはベンゼンが検出された範囲、赤いプリュームは環境基準(土壌溶出量基準)を超える箇所です。
 汚染の主たる部分は浄化されているようですが、土壌汚染防止法のメッシュ法の限界で、隣接箇所で浄化漏れが若干あるかもしれません(調査が不要な箇所と判定されて調査されていませんので浄化もされていませんが、汚染が広がっている恐れのあるメッシュがあります)。
 
計測値を表やメッシュ単位で管理するのではなく、連続的な広がりとして3次元可視化すると、浄化の方法も効率的かつ網羅的になると考えられます。
 
平成28年10月5日
 

 

 
豊洲汚染物質と難透水層の関係


 EVSにより、汚染物質と難透水層の関係を3次元でモデル化(浄化前)しました。
 豊洲の浅部の地質は、大ざっぱに分けると埋土層(Hg:礫層主体、Hs:砂層主体、Hc:粘性土主体)と有楽町層(Yc:沖積の粘土層)に区分されています ※3
 以下のsketchfabに載せたモデルには粘性土を主体とする埋土層(Hc層:青色の地層)とベンゼンの汚染プリュームを示していますが、両者の関係に着目してみると、6街区の卸売市場の地下に分布する汚染プリュームの下部には、Hc層が分布しており、深部への汚染の広がりはわずかであることがわかります。
 
 一方で、5街区の青果市場にはHc層が分布しておらず(砂層主体)、6街区に比べて深部まで汚染が広がっています。
 
 豊洲市場全体の埋土層の下部には、難透水層として十分な層厚を持つ有楽町層が分布していますが、5街区の汚染は有楽町層の深部まで広がっているのも注目すべき点です。柱状図を見ると5街区付近の有楽町層は、モンケンが自沈するほど非常に柔らかい粘土ですので、液性限界を超えたズブズブの液体状なのかもしれません。そうであれば、汚染がより深部まで拡散したとしても不思議ではないのかもしれません。
 
平成28年10月7日